6月24日、参議院本会議におきまして、山田吉彦は「防衛省設置法等の一部を改正する法律案」に関する質疑に登壇いたしました。
現在、我が国を取り巻く安全保障環境は戦後最も厳しい状況にあります。このような中、防衛省・自衛隊が組織としていかにその責務を全うし、国民の生命と平和な暮らしを守り抜くか。長年専門としてきた海洋安全保障の分野を中心に、今回の法改正が現場の運用面において真に実効性を持つものであるか、組織体制の強化と関係機関との連携の在り方について、小泉進次郎防衛大臣および政府に対して方針や見解を質しました。
以下、山田吉彦の質問全文と小泉防衛大臣の答弁を記載いたします。
国民民主党・新緑風会の山田吉彦です。会派を代表しまして、ただいま議題となりました防衛省設置法等の一部を改正する法律案につきまして、全て防衛大臣に質問いたします。
〇質問に入ります前に、先般、大分県の日出生台演習場において発生した悲しい事故について触れさせていただきます。国民の生命、財産を守るため、過酷な訓練に身をささげておられる中、不慮の事故により尊い命を亡くされた自衛隊員の方に対し心から哀悼の意を表しますとともに、御遺族の皆様に深くお悔やみを申し上げます。また、負傷された隊員の一刻も早い御回復を心よりお祈り申し上げます。
防衛力の強化は、安全な訓練環境と管理体制があってこそ国民の信頼に応えられるものです。今回の事故の原因究明と再発防止への取組、そして極限状態の任務に就く隊員たちの安全確保についてどのような決意で臨まれるのか、そのお考えをお伺いいたします。
〇さて、我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しい局面にあります。さらに、科学技術の進展に伴い、防衛の形態が変容しています。特に、近年の国際紛争において顕著になったサイバー攻撃、ドローンを用いた非対称戦、そして国民の意思を揺るがす認知戦の脅威は、もはや有事だけではなく、平時から我が国の主権や安全を脅かす極めて深刻な問題です。
今回の法改正において、これらの新たな領域への対応能力をいかに組み込み、迅速な意思決定と部隊運用を可能にするのか、その戦略的意図について伺います。とりわけ、偽情報の拡散や世論誘導を行う認知戦への対処は、防衛省のみならず政府一丸となった対応が不可欠と考えますが、政府の具体的な認識と今後の組織運用の方向性をお示しください。
〇また、本案では、防衛力の抜本的強化に伴う多角的な任務に対応するため、防衛副大臣を一名増員することが盛り込まれております。
防衛行政が扱う領域が、宇宙、サイバー、電磁波、さらには同盟国、同志国等への装備移転、技術協力など、質、量共に急速に拡大している現状を鑑みれば、政務三役の体制強化は理解できるものです。その際、二名となる副大臣の間における明確な役割分担と指揮命令系統の迅速化を示すことが重要です。
例えば、一名の副大臣が従来の防衛政策や日米同盟、部隊運用等の平時、有事の主たる防衛実務を担い、もう一名の副大臣が宇宙、サイバーなどの新領域あるいは国際的な多国間安全保障連携を専任で統括するといった効率的かつ機動的な体制構築が必要です。
副大臣に求める任務、役割分担の基本的なお考えをお教えください。
〇次に、南西地域における防衛体制の強化、沖縄に所在する陸上自衛隊第一五旅団の師団への改編について伺います。
我が国固有の領土である尖閣諸島周辺海域において、中国海警局の武装船による領海侵入や接続水域の航行が常態化しており、力による現状変更の脅威が続く深刻な事態です。このような情勢下において、南方を守る第一五旅団を師団へと格上げし、普通科連隊を増強するなどの組織改編は極めて重要です。しかし、名称や規模の拡大だけでは、実際に島嶼部に展開する際、海上自衛隊や航空自衛隊、さらには海上保安庁との間でいかに有機的かつ迅速な統合運用を行えるかが対応の成否を分けます。
今回の組織改編が、尖閣諸島を始めとする南西諸島の島嶼防衛において、具体的にどのような効果、作戦遂行能力の向上をもたらすのか、どのように尖閣諸島と東アジアの平和を守り抜くのか、防衛大臣の決意を伺います。
〇次に、自衛隊員の確保と処遇改善について伺います。
いかに高度な装備品の導入、組織改編をしても、それを運用する優秀な人材、自衛隊員がいなければ防衛力は機能しません。現在、我が国の深刻な少子高齢化の波は、募集定員に対する採用実績の低迷を助長しています。それは、我が国の防衛体制を根底から揺るがす弱点になりかねません。また、任務が多様化、激甚化する中で、隊員の負担は増すばかりです。
この深刻な構造的課題に対し、防衛省としてどのような対策をお持ちでしょうか。自衛官の処遇改善、女性自衛官の更なる登用とハラスメント対策を含む環境整備、定年の延長、さらには民間技術や無人アセットの導入による省人化など、取組状況と、将来に向けた自衛隊員の確保、処遇改善、人材育成戦略について、防衛大臣の具体的な方針をお聞かせください。
〇続いて、安全保障における重要性が飛躍的に高まっている宇宙領域について伺います。
現代の安全保障において、衛星通信、位置情報、そして宇宙からの警戒監視は、自衛隊のあらゆる作戦行動の基盤となります。主要国による宇宙空間の軍事利用が進み、キラー衛星や衛星通信への妨害技術が進化する中、我が国が宇宙における優位性を持たなければ、防衛力もその機能を著しく制限されることになります。
今回、宇宙領域における防衛力強化をどのように位置付けられ、どのような展開を目指しているのでしょうか。また、日米間における宇宙安全保障協力の現状と今後の展望をどのようにお考えか、答弁を求めます。
〇最後に、海洋国家である我が国の生命線とも言える海洋安全保障、その中でも海底ケーブルの防御及び海底資源開発における警戒対応について質問いたします。
我が国の国際通信の九割以上が、海底に敷設された光ファイバーケーブルを経由しています。また、経済安全保障の観点から、南鳥島周辺海域を始めとする我が国の管轄海域におけるレアアースあるいはメタンハイドレートといった海底資源の開発は、国家の未来をつくる重要プロジェクトです。
しかし、これらの海底インフラ整備や資源開発現場の安全は極めて脆弱であり、他国の不審船、潜水艦等による破壊工作、違法な海洋調査の標的となるリスクに常にさらされています。これまでの国会質疑においても、海底ケーブル等の防御に関する責任の所在や各省庁間の連携の曖昧さが指摘されています。
サイバー対策と一対を成すインフラ防衛は、防衛省が中心となり、海上保安庁や関係省庁、さらには民間事業者と緊密に連携しなければ守れないと考えます。我が国の領海及びEEZ内、また公海における海底インフラ、海底資源開発の現場を誰がどのように責任を持って守り抜くのか、その具体的な監視体制の構築と緊急の事態における対処要領について、大臣の見解を伺います。
〇我が国の平和を守り、次の世代にこの美しい国を引き継ぐために、法制度の整備と実効性のある組織改革、そして何よりも現場で汗を流す隊員たちへの確かな支えが不可欠です。本法案が真に機能する防衛力の抜本的強化につながるよう、政府の誠実的かつ具体的な答弁を強く求め、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。
山田吉彦議員にお答えさせていただきます。
〇まず、日出生台演習場で発生した事故の原因究明や再発防止等に向けた決意についてお尋ねがありました。
現場の隊員の安全に万全を期すこと、そして隊員やその御家族を守り抜くことは、防衛大臣としての私に課せられた重要な使命です。こうした決意の下、原因を徹底的に究明し、再び同じ悲しみを繰り返さぬよう、同時に、隊員が安心して活動できるよう、例えば車両間のデータリンクを用いて隣接車両の操作状況を記録するなど、再発防止のためのあらゆる努力を尽くしてまいります。
〇次に、新たな領域への対応能力と、認知戦への対処についてお尋ねがありました。
本法案は、宇宙作戦集団の新編や自衛隊サイバー防衛隊の増強等により、指揮統制、情報収集の基盤である宇宙・サイバー領域の防衛体制を強化することで、迅速な意思決定や安定的な自衛隊の任務遂行を確保するものです。
認知戦については、防衛省は情報を収集し、情報の真偽等を見極め、適切な情報を戦略的、迅速に発信して対応するとともに、関係省庁と連携しながら、政府一体として取り組んでいきます。
〇次に、防衛副大臣に求める任務、役割分担の基本的な考え方についてお尋ねがありました。
防衛副大臣は、防衛大臣不在の場合、その職務を代行する任務を担っており、約二十四万人の自衛隊員を抱える組織をしっかりと管理運営し、危機管理に万全な体制を取るという点において、重要な役割が求められます。また、具体的な役割分担については、着任の際に本人の専門分野や経歴などを考慮しつつ私が決定することとなりますが、基本的な考え方としては、省全体として総力を挙げて対応する必要がある危機管理対応等の業務や全体を俯瞰しながら対応することが望ましい防衛協力等の業務については両副大臣が共通して担当することとし、その他は部局ごとに分担を割り振ることを想定しております。
〇次に、今回の組織改編と南西地域における防衛体制の関係についてお尋ねがありました。
戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中、第一五旅団の師団への改編は、普通科連隊の増強等により即応態勢を高め、南西地域の防衛体制を一層強化し、抑止力、対処力を向上させるものです。尖閣諸島を含む我が国の防衛に万全を期し、自国を守り、自由で開かれた地域の平和と安定に貢献できる防衛力の整備に全力を尽くしてまいります。
〇次に、自衛官の処遇改善についてお尋ねがありました。
人口減少は避けることのできない厳しい現実です。このため、自衛官の給与体系の独自改定などの処遇改善、各基地等の女性区画の整備、令和十年からの自衛官の定年の引上げといった取組を通じて、現員を確保し、自衛隊員一人一人の能力を最大限に引き出すための取組を強力に推進します。さらに、徹底した無人化、省人化を推進し、防衛省・自衛隊の変革につなげてまいります。
〇次に、宇宙領域における防衛能力強化と日米協力についてお尋ねがありました。
宇宙空間は、指揮統制、情報収集のみならず、国民生活を支える基盤そのものであり、宇宙領域における防衛能力を着実に強化してきました。今般の航空宇宙自衛隊への進化は、抑止力、対処力の強化に大きく貢献するものです。同時に、日米間の連携も不可欠であり、この調整等を行う宇宙支援隊を設けます。日本の優れた技術を生かしながら、我が国自身の能力を強化するとともに、アメリカ軍との連携を強化してまいります。
〇次に、海底インフラ、海底資源開発における監視体制の構築と緊急の事態における対処要領についてお尋ねがありました。海底ケーブルや海洋調査の安全確保は重要です。政府全体で通信事業者と連携し、様々な施策を実施しています。 防衛省でも、警戒監視活動で得られた情報を海上保安庁等と共有するなど、関係省庁と緊密に連携しています。
緊急の事態には、その推移に応じ、自衛隊に各種の行動を命ずることにより必要な措置を講じます。引き続き、関係省庁と連携の上、対応に万全を期してまいります。
ありがとうございました。



なお、当日の質疑の様子は、参議院インターネット審議中継にてアーカイブ映像が公開されておりますのでご覧ください(令和8年6月24日本会議を検索、山田吉彦の質問は59:50より)。
今後とも、国民の皆様の安心と安全を守るため、全力を尽くしてまいります。変わらぬご指導、ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

