【第12回】【クロマグロの海を守る】台湾との友好関係が支える海洋秩序

クロマグロの産卵場としての重要性

尖閣諸島周辺の海域は、クロマグロの重要な産卵場として知られています。

特に5月頃からは、石垣島でのクロマグロの水揚げも本格化し、地元漁業にとっては欠かせない漁場となっています。

台湾との「共存」の枠組み――日台漁業取決め

この海域では、2013年に日本と台湾との間で交わされた「日台漁業取決め」にもとづき、

台湾の漁業者による漁が認められています。

これは、日本と台湾の友好関係を尊重する観点から築かれた合意です。

取決めに際しては、台湾における遠洋漁業の拠点である蘇澳鎮の市長と、尖閣諸島の所在地である石垣市の市長が直接会い、地元同士の合意を形成しました。実は私もその調整の一端を担っています。

台湾の領有権主張と現状の安定

尖閣諸島について、台湾が領有権を主張しているとの見方があります。

確かに、かつての馬英九総統の時代にはそのような発言がありましたしかし前政権の蔡英文総統、現政権の頼清徳総統のいずれも、

公式には領有権を主張していません。
これは、日台漁業取決めの締結に際して、台湾側が島の扱いについて

慎重な対応を取ることで合意したためです。

日台の協調による「抑止力」

現在、尖閣諸島を奪取する意図を示しているのは、中国共産党率いる

中華人民共和国だけです。このような状況において、​​日台間における地域主体の連携は、

中国による一方的な現状変更に対する抑止力として機能しているといえます。

今後も日本と台湾による友好関係の発展こそが、尖閣諸島周辺、ひいては東アジア全体で海洋秩序を安定させるためのカギとなるはずです。

この記事を書いた人

山田 ヨシヒコ

学習院大学経済学部を卒業後、東洋信託銀行㈱にて都市開発および債券トレーディングを担当。
その後、財団法人日本船舶振興会に勤務し、海洋問題や造船技術開発を担当。2009年に東海大学教授に就任し、2019年から2023年まで、東海大学学長補佐・静岡キャンパス長を務める。国土交通省や東京都をはじめ、各機関において政策アドバイザーを歴任。